台風15号襲来のその後。今回この倒れた電柱、電信柱問題が再度クローズアップされてきたが。
台風15号襲来のその後
前記事の如く、9月8・9日に、相模湾を南から北に通り抜けた15号でした。今日で15日目ですが、未だに電気が復活していない地域が相当数あるようです。千葉県は、平地が広がっていて、高い山が少なく、台風の進路方向右側ということで、予想を超える強い風が吹いたと推定できる。米国の竜巻が多く発生する平坦な地域とよく似ている。千葉県千葉の瞬間最高風速が57.5m/sだったそうで、もしかしたら場所によっては60m/sを越えていたかもしれない。多くの屋根が全部または一部が飛ばされて、一戸建て住宅は、大半以上ブルーシートで覆われている場面がTVで流ている。米国の大平原にある家々は大竜巻(トルネード)に襲われると、こんなものじゃない。家まるごと破壊され、全てすっ飛んでしまう。もちろん台風の風と大竜巻の風では、同様に比べることは出来ないが、最大瞬間風速についてだけ比べてみると、米国のトルネードの場合
FF2規模が49~60m/s、FF3規模が60~73m/s、FF4規模が74~89m/s、FF5規模は89m/sの想像を絶する風速だそうだ。だから屋根が飛ぶなんてものではなく、建物全体が破壊されてしまう。米国アイオワ州におけるトルネード被害調査報告
日本では、建築基準法によって、地震だけではなく、風力についても基準があり、それを満足させる設計にしなくてはならない。特に鉄骨造、大規模な木造の場合で構造計算が義務付けれている建物には、基準風速が決められていて、各地域によって違うが、風速30m/s~風速46m/sまである。
構造計算の場合、安全側に見て、これらをクリアーしている計算と構造設計とする。建物の経年劣化を考慮し、最近の気候変動を考慮すると、さらに大きな基準風速にするための改正が必要かもしれない。
今回の一般木造住宅の被害を見ると・・・・・・・・・
在来工法(木造軸組み工法)では、あまりにもサイズの小さい屋根垂木(たるき)が、そのままクギ止めで施工されているので、屋根が飛ぶのは当然だろうと思う。オイラ、木造の一般住宅は、ツーバイフォー工法(枠組み工法)がほとんどだったので、それと比べるとあまりにも煽り風に対して万全ではない。特に軒先の長い屋根の場合、この頃は煽り止め金物を使うようになったが、昔ながらの大工さんは昔からの工法で施工するので、この煽り止め金物なぞ、手間が掛かるので施さない場合が多い。40☓45のサイズの垂木を桁に打ち付けておしまい。軒先があると、煽り風で屋根全体が揺さぶられ、その部分が浮き上がって、それに連鎖して屋根全体が飛ばされてしまう。もちろん最近建てられた住宅は、煽り止め金物を付けられているのが増えてきてはいるようだが。
枠組み工法は北米の在来工法で、この垂木(たるき)のサイズは、ツバイフォー=2インチ×4インチ=50.8ミリ☓101.6ミリのサイズが普通、支持間が大きいと、2インチ☓6インチ(ツーバイシックス)=50.8ミリ☓152.4ミリや、2インチ☓8インチ、2インチ☓10インチなどサイズがある。そして、桁側にはハリケーンストラップ(煽り止め金物)が全てに付けられている。
構造計算のいらない一般住宅の場合、どうしてもこれを施さなくてはならないという規制はないので、大工の裁量になる。今回屋根が飛んだり、一部屋根が破損した建物は、ほとんどこの類だと、被害映像を見て判断した次第。新しい建物もあったと思うが、ほとんどが築10年~20年以上前だ。ここ30年前頃から、住宅金融公庫対象建物の場合、施工基準が細かく決められていて、この煽り止め金物も施すようになって来てると思うが、検査事態がいい加減で、ほとんど大工任せになっていると思う。
もし自分の建物を在来工法で建築中なら、この煽り止め金物が付いているか、また垂木のサイズが昔からのサイズではなく、仕上材の種類(重量)、軒の出の長さにあったサイズなのか検討する必要があります。これ重要です。
瓦葺きについて
また、今回も被害で伝統的に瓦の飛散だ。そもそも伝統的瓦葺き、特に和系瓦は、横桟引っ掛けで、例えばどこでも瓦1枚を持ち上げ、上の被さりを揚げると、その瓦を取り替えることができる構造になっている。ということは、グラグラなのだ。そこに今回のような大強風が吹くと、1枚が飛び、連鎖して次々飛んで行くことになる。最近の瓦はビスで留める穴が先端にあり、施工する時横桟に固定することができる。
約24年前に、北米のセメント瓦を他の建材と共に輸入して、現場で施工させたのだが、先端に2つ穴があいていて、そこにスクリュービスを施した。また全瓦ではなく、中央部は無しで良しの説明書がついていた。つまり瓦葺き施工は、従来の引っ掛け瓦では大強風には耐えられないことを、瓦業者は認識しなければならない。それでは以前の建築の瓦葺き建物はどのようにしたら良いのか?
毎年台風に襲われる沖縄県の住宅の瓦葺きは、重ね部に漆喰(しっくい)で風を塞ぐように施工されている。まぁその景観が沖縄の風物になっているが、他の従来からの瓦葺き建物はどのようにしたら良いか?
この様に、屋根用シーリング材をこのような感じで施工すれば、大強風による、瓦の飛びを防ぐことができる。まぁ10年以内には再度チェックし、劣化したところはは再度充填する。色は数種あり、シーリング施工に先立ちテープ養生してこのようにきれいに仕上げれば良い。運動神経の良い人なら、素人でもできる範疇の作業だ。
カラー鉄板屋根葺き
また、波型カラー鉄板(ナマコトタン板)葺きについても、それを留めるクギは昔は単に鉄丸クギでしたが、今はステンのスクリング釘で錆びないし、抜けにくい釘が常識になっている。一昔前の屋根は従来の丸釘で錆びるし、劣化で抜けやすいから、鉄板が飛んでしまう事例が多い。今やこの類の屋根材は、ガルバリウム鋼板が出来、ほとんど劣化しない、錆びない屋根材が廉価になってきて、普及している。2004年に台風22号がウチの地域を襲い、敷地内の木造2階建和瓦葺き棟(賃貸)を襲い、約90年前の和瓦の半分が割れ飛ばされ落ちてしまった。仲間の職人の助けを受け、屋根全面を「溶融亜鉛めっき鋼板+樹脂系塗料の焼付塗装」の屋根材で葺き直した。もちろん下地の構造用合板やルーフィングからやり直したが。これ地震対策もあって、屋根重量を軽くするためでもあった。現在を見ると、釘の抜けもなく、海が真ん前なので、潮風を心配したが、未だ錆一つ発生していない。鉄板屋根を留める釘くらいは全部今のステン釘に変えた方が良い。現在打ち付けられてクギの横に、新しくこの屋根用ステン・スクリング釘を打てば良い
少なくとも、築十数年以上前の建物は、台風の大強風対策として、以上のようなことを考慮し、自分でできることは自分でして、対策しておいたほうが、後で後悔することはないでしょう。
電柱、電信柱の問題
さて今回、多くの電柱が倒れましたが、近くの高木が倒れ電線に架かり、それに引かれて倒れた電柱や、ただなんとなく強風で倒れた電柱などでした。国際的には風景の中に、電柱などない方が良いのですが、復旧など利便性のことを考慮すると、電線・通信線の地中化が出来ません。これ大昔からの日本の課題です。海外の多くのの地域に観光旅行で行きましたが、先進国の中で電柱や電信柱関しては、未だ日本は90数%が地中化されていません。あの台風・地震の多い台湾さえ、90数%以上、電線・電信線の地中化を達成しています。なぜ、日本は地中化が難しいのか、海外の事例をもっと開示してメリット、デメリットをもっと比較しやすくしてほしいと思います。ただ、PC用の光ファイバーケーブルの結線やケーブルTVケーブルの結線は、現在の方が早く、廉価にでき、メンテナンスもメリットがあります。ただここまで来ると、西日本以南の電源周波数60サイクルと東日本以北が50サイクルでここまで来て、同一サイクルに出来ないのと何か似たようなもので、今となっては遅すぎたようなものか?全国のこれらを地中化するには、莫大な税金が必要となりますね。その負担はどうするのか?
ニュージランドの南島、古い伝統のあるarrow townに行った時の写真です。こんな田舎町でさえ、電柱、電信柱はありません。その結果景観の良い落ち着いた風景となります。
これは、日本全土、どこにでもある風景
すでに90%以上が地中化がされている台湾はこの問題について、災害の際どの様に対処しているのか?メリットとデメリットを国民に具体的に理解できるように開示をしてほしい。国際的には、この件については、日本政府の「不作為の行為」といえるでしょう。
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