原油価格は先物金融バブルで高騰していたことが実証されました。これから始まる原油暴落による金融危機に世界はどうなるか。
今日のBSワールドニュース(NHK)の中の特集(キャッチインサイト)で、原油価格問題について、大変分かりやすく説明していた。
オイラが中学生の頃、ローマクラブだったか、原油はあと30年たったら枯渇すると。1972年「成長の限界」で、人口の爆増で食料からエネルギーから消費尽くしてしまうと警笛、啓蒙が成されたことを覚えている。多分オイラが初めて”こども新聞”で知ったのは1961年ころだったと思う。そうか、1990年代には油田は掘りつくしてしまうのかと素直に信じてしまった。
結局この ローマクラブ って結構如何わしい組織だったようだ。石油メジャーと結びついていたようだった。
この提言に、日本を含め世界各国が大騒ぎとなった。その直後の1973年、第4次中東戦争でオイルショックが起こり、石油価格が暴騰、先進国は一気に原子力発電の建設を活発化させた。その後、1980年代になると、「ローマクラブ」の提言がウソのように、世界各地で有望な油田が次々と見つかり、「あと100年、好き放題使っても地球から石油はなくならない」ことが判明した(ベンジャミン・フルフォード『ステルス・ウォー』 講談社 2010年 ISBN 9784062161244)
で、この頃の原油価格はと言うと、1967年1月まで3ドル/バレル以下だった。しかし、この「成長の限界」の原油枯渇という恐怖のシナリオは頭の隅にこび付いていて、2004年ごろからの40ドル/バレル以上というな急速な値上がりは、原油が足りなくなったのだろうなと納得させられていたわけで。・・・・・・・
この番組の文字起こしをしながら、まとめてみました。解説は公益財団法人 世界平和研究所の主任研究員、藤 和彦です。HPに研究成果がありますが、大変優秀なシンクタンクのようです。ご一読を!
まず、近年のWTI原油先物価格のチャートですが。
このように12年ぶりの安値を付けている。現状はこの影響により、サウジアラビアは財政赤字になってその赤字幅は11兆円超えだ。ロシアはルーブル安となりインフレが始まり国民が汲々としている。米国はシェールオイル企業の業績悪化で大量倒産の懸念が始まっている。原油安はどこまで拡大するのかその影響は?
世界銀行の原油価格の見通しは
一般に中国が国内経済の低迷で、ここ数年原油の爆買いを止めたからからでは?という説が巷であるが、実は中国の需要は一昨年9%増、昨年は8%増で着実に増えている。つまり中国の輸入に左右されているわけではない。
そもそも、世界の原油生産量は1日当たりおおよそ1億バレル、それに対して価格が下がりだすころの供給過剰が100万バレルだったのが、200万バレル/日になっただけだった。100万バレル/日供給過剰が増えただけで、これは原油生産量のたった1%の過剰で、原油価格が1/3にもなってしまったのは、別の要因があったからではないだろうか。
実は、原油価格はWTI原油先物価格が、実態の価格を決めていて、特に2000年代の中ばから株式、債券に次ぐ第3の金融商品となって来た。WTI原油先物市場の取引高は、NYダウの半分ぐらいまで増大している。そして、この間が異常だったのだ。90年代は20ドル/バレル~50ドル/バレルだった。つまり金融取引の異常な価格が直ったわけで、これからの10年・20年は20ドル~50ドルで推移して行くものと考える。
これは、2007年~2008年のサブプライムローン問題からリーマンショックに至る構図とそっくりなのだ。これは金融危機なのだ。リーマンショック以降、米国金融復活のために、FRBのおこなった量的緩和QE1、QE2、QE3でドルが安い金利で世界中に流れたのと明らかに相関関係がある。そして、QE3が終了した2014年10月から下がり始め、2015年12月のFRBの利上げでさらに下がった。
米国のシェールオイル企業は原油価格が30ドル以下ではほとんどが採算割れ状態となる。昨年から今年に向かって、”与信”枠を締める傾向にある。与信を締めるということは貸し出しを締めるということで、これら企業の売り上げ高に占める債務が6倍と言われているので、資金繰りが悪化して、シェール企業が先々大量倒産するのではといわれている。
ジャンク債というのがあるが、シェール企業はその内の3割発行していると云われている。金融商品(CDO)の中に金融工学的に複雑に組み込まれている。その結果、ジャンク債が債務不履行となっても、その金融商品の中に、シェール企業のジャンク債がどのくらいあるのか、またはないのか疑心暗鬼となり、あの時の金融危機と同じように大混乱となり、その金融商品の価値がなくなってしまうことになり、再度の金融危機に発展してしまう。
(オイラ:カレーライスにちょっぴりウンコを入れてかき混ぜたら、誰もカレーを食えなくなるという価値が無くなる理論とおんなじじゃ。)
さてサウジアラビアについてだが。財政危機を招く恐れがある。
サウジの財政収支均衡原油価格は約90ドルと言われている。今のままだと最悪1バレル10ドルになる可能性もあるとすると、大変なことが続いているわけで。現在イエメンへの軍事介入で軍事費が増大している。王政国家のサウジは、国民に政治権利を与えない代わりに、必要な生活物資を安く供給するというバラマキ政策で国民を抑えてきた。しかしそれが出来なくなり、財政難で大幅に補助金のカットや、ガソリンは今年から1.6倍に、また今年から5%の消費税を設けようとしている。当然不満が高まるわけで、この王政支配が何時まで続くのか?「アラブの春」がこのサウジで起こる可能性もある。
さて、日本は原油の8割をこの中東から輸入しているわけだが。先々可能性を考えると、現在ロシアから8.0%輸入しているが、この枠を広げることもある。
とりあえず、70年代の中東危機のオイルショックで現在日本は国家石油備蓄が3億バレルあり、サウジが全面ストップしても300日分は確保出来ている。ただ80年代国家備蓄を整備してから、一度も行使したことがない。そろそろ迅速に行使できるような体制を整えておくべきと。
引用終了
結局、原油に関しては、枯渇することはなく、ただ少し採算が掛かることを覚悟すれば、あと100年以上あるらしい。さらに近年の値上がりは先物市場が招いた金融の仕業だったのだ。08年9月のリーマンショックの時までの急速な値上がりは、他の市場が危険になり、このオイル先物市場への投機に逃げが集中して、異常な値上がりになったことが分かる。
オイラ先見の明があったのか、当時その点を突いた記事を出したことがある。原油価格がどんどん値上がりして世界が騒然となっていたころだ。このとき、これは原油が枯渇し始めているサインだと、愚かな専門家達がテレビで解説していた。厚顔無恥なこいつらは今もテレビで「そんなこと言ったけ」と偉そうに別の事を喋っているが。
石油高騰は、カジノ金融市場から。2008年5月24日 (土)
・・・・なんでも世界全原油取引量の0.5%以下であるウェスト・テキサス・インターミディエイト原油(WTI)の石油先物の価格で決まっていて、その価格が定価になって中東原油・ロシア原油も取引されている。実物経済では、コスト+利益=定価だろうが、一般に原油の採掘コストは1バレル10ドル前後それに輸送コスト+利益でも20ドルでも成り立つらしい。
1バレル120ドルとすると、残りの100ドルって一体何なのさ。完全に世界の商品取引は実物市場ではなく、金融カジノ市場になっているんだ。 その理由としては、住宅バブルや株式に行っていた特にヘッジファンド資金が、商品先物特に原油先物取引に集中しているとのこと。このままで行けば1バレル200ドルの悪夢もありえるとのこと。
ますます日本のみならず世界中の燃料(GS等)が急速に高値になっていく。現在日本では1L約160円前後。ヨーロッパでは1ユーロ=160円として1L200円を軽く超えているとのことだ。 このことに日本の経済アナリストらは、分析をしても強烈な批判しない。批判をするだけのインテリジェンスがないのかもしれないが。・・・・
あと、以下のサイトもご参考に、
Price of West Texas Intermediate Crude; Monthly NSA, Dollars Per Barrel
このサイトの画面左に1946年1月から今日まで、毎月のWTI原油先物価格がまとめられています。若き頃の価格を、当時を思い出しながら・・・・。いかに原油価格が近年クレージーだったのかわかります。
ヨットの会で雑談した時、シェル石油を定年退職したスー坊が、「自分が入社した時、原油価格は3ドルだったんだよ」と話したのを思い出します。
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コメント
http://yuyuu2013.blog.fc2.com/blog-entry-4340.html
今回の原油の下落はシェールガスが原因とか言う人が居るけれど、本当はそうではない。
リーマン・ショックの前と後にOPECが悪乗りして1バレル100ドルを越えたものだから、滅茶苦茶に儲かってしまった。
そこで上流の上・・・一番、費用が掛かる新油田の開発に、資金が回った結果、世界の各所に油田が見付かった。
この上流の上の部分を開発するのは、どえらく金が掛かるので国際石油資本でないと無理なんです。
掘り当てる実行部隊は一部の専門家集団のみ。
映画「アルマゲドン」を見た人なら分かるでしょう。
国際石油資本も連中に依頼するしかないのです。
今の状態は、中国経済の低迷とか、シェールガスの影響という問題ではないのです。
新たに発見された油田も、当分は掘れないのですから。
投稿: アキラ | 2016年2月 8日 (月) 18時27分