ギリシャのデフォルト問題のアキレス腱はCDSという核爆弾。CDSについてのお勉強。
オイラの記事でよく、米国英国発の”カジノ的ねずみ講的詐欺金融”というキーワードを使わさせてもらうが、”グローバルスタンダード金融”のもと、金融自由化の世界になり、債権の証券化、そこから発生したデリバティブ商品等などが盛んに売買された。特に米英そしてEU圏各国の金融機関・ヘッジファンドなどで。これオイラも2008年のリーマンショックの時、随分記事にしたものだ。
あのリーマンショックの時の世界金融危機の大元は、再度問題化しているCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の問題とイコールなのだ。そもそもカネを転がして、より多くのカネを稼ぐというのは、バクチ的な行為とも言えて、大きな意味では、株式市場、先物市場、為替市場もその範疇に入る。カネを転がすもとには利息・手数料が付くわけだから、それが起爆剤となっている。
まぁ、株式市場や先物市場・為替市場というのは、いわば世界の経済に刺激を与え、活性化をさせ、それなりにも貢献をしてきた。しかしやはりバクチはバクチで、これら市場はカジノとあまり変わらないとも言える。
しかし、原始的市場が発展して、コンピューターの発達・金融工学の発達とともに、金融の行過ぎたカジノ化になってしまったのが、ここ20~30年なのだろう。特に、このCDSなのだが・・・・・・・・・・
本来保険商品なのだ。ある企業の発行する社債を1億円投資として買うとする。しかし、約束した金利と共に元金が償還日に返ってくるのか?心配なわけで。そこで信用ある証券会社に、もしもその企業がデフォルトの保険を掛ける。1億円+利子の場合もあれば、その内の一部という場合もある。
当然、その保険には、受けた保険会社に手数料を払わなければならない。それが市場で料率が決まる。これがCDSスプレッドで”bp(ベイシス・ポイント)”の単位で表され、1bp=0.01%の元本に対しての保証料ということになる。
つまり、例えば1億円のCDSの保険料は、CDS指数が1bpの場合には、1億円×0.01%=1万円ということになる。開始から5年間の*月**日に満期となった場合、毎年1万円その相対取引の金融機関に支払うことになります。もし、途中で対象企業が倒産したら、その日までの保険料納めで良い。5年間何事も起こらなければ、計5万円の支払いということになる。
そして、もしその間にその企業がデフォルトして、社債の償還が不可能となった場合には、その受けた金融機関が、1億円+利子分を掛けた額を保険者に支払うことになる。1bpならたいした金額ではないが、100bpとなると1%となり、年100万円の保証料となり、5年では500万円となる。
つまり、その企業の破綻リスクに応じて、CDS市場において、日々その都度CDSスプレッドが決定され、bp(ベイシス・ポイント)が変動する。だから1年前には1bpだったのが、現在は100bpで保証料は100倍となるなんていう世界なのだ。これは、ある企業だけではなく、ある国家の公債(国債等)にも応用される。かつてアルゼンチンの国債が破綻したりで、国債が紙くずとなったり、そんなことは長い歴史では数々よくあること。それをヘッジするために生まれたものだ。
まぁ、ここまでなら、火災保険、生命保険と似たようなものだから納得が行くが、問題はこの元にある取引に関係ない第3者もこのCDSを相対取引で購入できるシステムになっていることである。またそのCDSを市場で売買でき、それが証券化されデリバティブ商品として、世界中で売買されていることだ。
大雑把に云うと例えば、あなたに10億円の(特別)生命保険が掛けられ、それはあなたの健康度によって、毎回保険料が変わる。それを第3者達が勝手に保険料を支払って参加できるとする世界があったとしよう(もちろん日本では法律で本人しか保険は掛けられないが)。
そしてその保険者は、その権利を市場で売買できる。実際米国では”死亡債”という商品まで出ている(日本では法律的に無理だが)。するとその第3者である保険者とすれば、対象者に期間内に必ず死んで欲しいという期待値が高まる。なんたって、小額の掛け金で10億円手にいれることができるからね。これがCDSの正体ともいえる。
Death Bond(死亡債)とSwine flu(豚インフルエンザ):2009年10月21日 (水)
この辺のことは、このブログの過去記事に詳しく載せている。
世界金融恐慌・CDSについてのお勉強:2008年10月21日 (火)
概略を抜粋すると、
バンカーたちが思いついたのは、ある種の保険商品だ。貸し倒れた場合の元利金の支払いを第三者に保証してもらい、代わりに銀行は保険料を払う。そうすれば、JPモルガンはリスクをバランスシートから切り離し、準備金を取り崩して商売に回すことができる。
この仕組みが「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」で、デリバティブ(金融派生商品)の一種だ。CDSのアイデア自体はその2、3年前からあったが、大きな取引をしたのはJPモルガンが最初だった。同社は90年代半ばに「スワップデスク」を設置、CDSの市場を作るためにマサチューセッツ工科大学(MIT)やケンブリッジ大学から若い数学者や科学者を雇い入れた。
数年後には、安定的な収益を確保しながらリスクを回避する手段として、CDSは最もホットな金融商品になった。
だが、40年代当時のロバート・オッペンハイマーや部下の核物理学者たちがそうだったように、ブリッケルと同僚たちも、自分たちが開発しているのがモンスターだとは気づかなかった。今日、経済がよろめきウォール街が廃墟と化したのは、彼らが14年前に解き放った。
ご承知のように、これにリーマンブラザーズ・AIGなどもCDS受け手としての投資銀行が嵌ってしまい、顛末はあの通りの顛末となった。それにもかかわらず、このCDSはこの後も延々続けられていて、舞台はEU諸国のソブリン債(公債)問題に発展してきているのだ。
今回のギリシャのデフォルト問題の根本は、国債の借り換えが出来なくなって、また新規国債を発行しても、危険リスクが大きすぎて消化出来ないという問題以上に、もし、デフォルトしたら、CDSの受け手になっている、米英、ドイツ・フランス、また規模はそれほどでもないが、EU諸国内の金融機関が、そのデフォルト・イベント決済に、天文学的金額を支払わなければならないからだ。それらCDS受け手の金融機関は、連れ小便デフォルトとなってしまう。
では、このデフォルトの定義とはどのようなものか?
実際の取引慣行と具体的に異なる点としては、いくつかありますが、例えば、上では倒産と書きましたが、通常は「倒産が起きた場合」のみではなく、「クレジットイベントが発生した場合」とより一般的な形で定義され、企業を参照組織とするCDS契約の場合、
1. バンクラプシー(Bankruptcy、ISDA邦訳では破産)
2.支払不履行(Failure to Pay)
3. リストラクチャリング(Restructuring)
の3つをクレジットイベントとみなす3CE(CE: Credit Event)での契約が一般的となっています(それぞれの詳細は割愛させて頂きます)。
また、上ではクレジットイベントが発生した場合に1億円支払われると書きましたが、実際にはあらかじめ定めた引渡可能債務をBさんはSさんに引き渡すことになっています(現物決済)。 さらに細かいことですが、保険料の支払いは年1回払いではなく、年4回払いです。
デフォルトにも、決済が認定されるには、様々な条件があるようだ。これが現在ギリシャ国債について揉めている最大の問題なのだ。債務を債権者が50%自主的に放棄する。いや70%でなければならない、と昨年からさんざんヘアーカット(債務元本減免)で揉め続けてきた。サルコジとメルケルが毎回登場してきたが。
ここまで来て、ギリシャCDSについて分かれ道が見えてきた。
1.減額されたギリシャ債務を自発的に交換する。=この場合には秩序は保たれCDSのディフォルトイベントは発動されない。
2.ギリシャ債務の交換を強制的にする。=この場合には秩序は保たれるが、CDSのデフォルトイベントが発動される。
3.何もしないで、3月20日の長期ギリシャ国債の償還日(144億ユーロ=1.5兆円前後)を迎える。=償還が出来ないのだから完全にデフォルトとなり、秩序は崩壊して、CDSのデフォルトイベントが発動となる。
ギリシャCDSを安く買い続け保持しているヘッジファンドは、毎日デフォルトイベントが発動するのを願っています。「ギリシャよ!デフォルトしろ!」と。
本当にCDSが発動となった場合、CDS受け手のドイツ・フランス・スイスの銀行や、米国、例えば、GS、シティバンク、モルガンにも莫大な支払い義務が生じ、救済するためにまた国の財政の出動という、マッチポンプ対策が再現されることになるかもしれません。このために、ECBもFRBもまたカネを刷る事になるという事態に。
ユーロ圏の各国も、この際はギリシャが自発的にユーロ脱退することを望んでいる風潮となっているようですね。ギリシャは、昨年の約束の財政再建も全然進んでいなく、脱税者や税金未納者リストを発表して、これをも担保にカネを引き出そうとしている。この国に愛想も尽きた状態になっているようで。傾向としては、ギリシャデフォルト&ユーロ脱退が今年末までに見られるかもしれませんね。
発祥としてのCDSは確かに金融の活性化のためには必要なものでした。しかしそこから発展して、当事者間以外で大量にCDSが契約され、それが金融商品となり、デリバティブとなり、逆にCDS対象がデフォルトすることで、大きな利益を得ることができるこの仕組み債というのは、害を為すカジノではないだろうか。CDSは相対取引なので、相殺できるものは相殺させて、以後このCDSに対して大幅規制をしなければ、この連鎖が続いてより深刻な金融恐慌をもたらすのではないかと思うのだが。
日本の銀行筋も多少はこれに絡んでいるのもあるが、前回のバブル崩壊で立ち直りの最中だったので、これが幸なのか、そんなバクチには積極的に参加する余裕がなかった。今のところわかっているのは、大手金融機関数行ぐらいらしい。まぁ、このぐらいだったら、国が最悪は最後の貸し手になることが出来る。
CDSデフォルトイベントが、アッチコッチで炸裂したら、それから上手く逃げることが出来れば、日本の金融機関の再度のサンライズとなるかもしれない。ガンバレ!
一粒で二度おいしいオイラのブログ:今日の画像
ギリシャに続いて、ポルトガルの国債の10年物利回りも、またも急上昇です
現在15.36%です。これを購入出来る勇気のある機関はあまりないでしょう。
CDSスプレッドは
1月26日で1,374bpとなっており、保証料は元金の13.74%となっています。
そもそも200bpを超えた時点から危ないといわれる世界です。
ギリシャの次は、やはりポルトガルなのでしょうか?
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コメント
なんで、ユーロ圏のために、このアジアの日本がカネを差し出さなくてはならないの?お前らのカネだけで処理しろよ!
記事:
今、ヨーロッパ中央銀行を守るために極秘に計画されている策はヨーロッパ安定化基金にECB保有ギリシャ国債をそのまま移転させ、そこに責任を負わすとされており、この基金に日本の外貨準備高を全て投入させる(振り替える)ことになります。
既に日本の外貨準備高はドルベースではなく、事実上ユーロ建てになっているとすればこの振り替えは簡単に出来ます。
ヨーロッパ安定化基金にギリシャ国債、ポルトガル国債、イタリア国債、スペイン国債をECBが買い入れた額面で振り替え、そして破綻させれば、ヨーロッパは安泰となりますが、では基金に出資した投資家(日銀)は?
この策で決まるのかどうか。
日本(日銀)がどれだけヨーロッパ安定化基金に資金を出すかにかかっています。
投稿: aiya | 2012年1月28日 (土) 16時40分
世界は現在「資金需要」が枯渇しています。
債権金融により、無理やり「資金需要」を作り出した結果が、
現在の金融危機の実体です。
民間の借金は天文学的数字に上っています。
しかし、これは、将来的利益に対する見込み金額であって、
実質的な負債ではありません。
CDSを例に取れば、支払われた保険料に対して、
デフォルトした際に支払われる金額は、
金利が2%だとすれば、50倍になります。
多くのデリバティブ商品が、存在しない利益に投資していたので、
その実損は、1/50程度と考えて良いかと思います。
リーマンブラザーズが破綻した差異に、
損失を互いに清算し合う「解け合い」という作業をした所、
損失額は約1/50に圧縮されました。
現在のデリバティブの残高が4京円と言われています。
1/50は800兆円に相当します。
アメリカで200兆円、ヨーロッパで200兆円
アジアで200兆円、その他の地域で200兆円だとします。
民間銀行の破綻を防ぐ為、各国政府が銀行を国有化すれば、
どうにかなりそうな金額ですが、その分国債残高が積み上がります。
今でも国債危機と言われる状況なので、
この上200兆円クラスの負担に各国財政は耐えられるでしょうか?
多分、中央銀行が直接国債を引き受ける事になります。
同時に通貨の大増刷が始まります。
投稿: 修羅 | 2012年1月30日 (月) 10時39分