国民負担率と消費税増税:日本は世界のなかでどのくらいなのだろう
消費税増税についての議論が今回の参院選の争点だと。自民党は消費税10%を打ち出した。しかしいつから実行するのかは明確にしていない。イラ菅総理もそれに乗っかるように、消費税増税を論議はしなくてはならないと云って大騒ぎになっている。またこれも次の衆院選までは、実行しないとも云っている。
民主党のイラ菅総理の消費税増税は、マニフェストでバラマキ政策を約束して、その財源は、特別会計も含めた200兆以上の予算の10%、20兆円の恒久的ムダを削減して、それを実現することだった。またリップサービスとして公務員の給与20%削減の恒久的財源を当てるというものだった。
しかし、両方とも出来ないことが分かり、消費税増税に逃げることがミエミエだから、猿芝居をまたやるのかとお怒りなのだ。自民党は小泉政権でも消費税増税は公言してたわけで、ただ次ぎの総理の時にやるといっていたのだが、安倍政権になって、参院選で大負けして、増税はできなかった。しかし今回自民党が参院選に挑んで消費税増税に言及したことは、正直良いと評価する。つまり民主党の消費税増税と自民党のそれは、同じように見えて違うのである。自民党は民主党のマニフェストには縛られないからね。
さて、この消費税についてなのだが、その前に「国民負担率」から入ろう。
よく論議の対象になる、「大きな政府」と「小さな政府」これにつては様々な解説だつくわけだが、乱暴に簡単明瞭に云ってしまえば、
大きな政府は、各国民の手元に残るおカネ(可処分所得)が大変小さいってこと。だから国から多くのサービスは受けられるが、それ以外、例えば米国に旅行をしたり、自己研究のための費用、ベンチャービジネスに賭けてみるとか各人が発展するためのカネは不如意となる。パチンコ代や博打やお遊び代もほとんどなくなるということ(こりゃ奥さんにとってはいいことだが)。国民のカネは国が管理をしますということにもなる。
小さな政府は、各国民の手元に残るおカネが大変大きいってこと。だから国から小さな(または中程度)のサービスは受けられるが、不足分は自分のおカネを使いなさい。その代わり、問題が起こらない限り、そのおカネで海外旅行で見識を高めるのもいいし、カネを貯めて、自己研究のための費用、ベンチャービジネスに挑みなさいってことだ。まぁ、自分の人生、自己責任ですよということ。
大きな政府の最たるものは、ソ連だった。皆国が面倒を見るから、国から与えられた仕事をこつこつやりなさい。最低限死ぬことの無いよう、国家が面倒を見ますよと。そしてソ連は結局経済崩壊してしまった。
この大きな政府・小さな政府を見極める一つの見方は、国民負担率を見比べるというのが分かり易い。
国民負担率とは
国税と地方税とを合わせた租税負担の国民所得に対する比率である租税負担率と、年金や医療保険などの社会保障負担の国民所得に対する比率である社会保障負担率との合計。
「国民負担率=(国税+地方税)額+(年金+医療保険等)額 / 国民所得額」っていうこと。
この数値が高いほど大きな政府となる。
因みに最近の日本を見ると、昭和60年には33.9%だったのが、平成22年には39.0%とちょい上がっている。平成20年には40.6%と最高を示している。
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それでは、海外と比べてどうなんだろう。
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日本だけ2010年試算だが、日本39.0%⇒米国34.0%⇒英国48.3%⇒ドイツ52.4%⇒フランス61.2%⇒スウェーデン64.8%だ。簡単な話、日本で消費税増税をすると、租税負担の21.5%が、かなり上がることになる。どのくらい上がるかは分からないが。
この結果を見ると、日本は米国よりちょい大きい政府だが、この中では小さな政府ということになりそうだ。また英国のように社会保障費で取るより、租税でとる率が多いなどと、各国それぞれその比率が違うのが面白い。
これを、もっと多くの国との比較で見ると以下の様になる。(2007年度)
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なぜ大きな政府(高福祉高負担)の国々は、北欧・中欧に多いのだろうか。一説によると近隣だったソ連の福祉社会に対抗するうちにこんなことになってしまったというのもある。また歴史的にバイキングは戦利品・獲物を待っている家族のために、仲間は公平に分ける習慣が下地にあったなんてのもある。
最高がなんとデンマークで、71.7%もある。それもほとんどが租税で賄っている。仮に60%以上を超高負担国家とすると、上からデンマーク⇒スウェーデン⇒アイスランド⇒イタリア⇒ベルギー⇒ハンガリー⇒フランス⇒ルクセンブルグ⇒オーストリアとなる。
そして50%台を高負担国家とすると、上からフィンランドの58.8%⇒ニュージランド⇒ノルウェイ⇒ポルトガル⇒チェコ⇒スペイン⇒ドイツ⇒アイルランドとなる。
50%~45%までを準高負担国家とすると、オランダの49.9%⇒ポーランド⇒英国⇒ギリシャとなる。
45%~40%までを中負担国家とすると、カナダの44.4%⇒オーストラリア(全部を租税負担としている珍しい国)⇒スロバキア⇒そして日本の40.6%だ。
残り40%以下を低負担国家とすると、韓国の35.7%⇒米国の34.9%⇒スイスの33.6%ということになる。スイスってのは、金融で独占的に儲けてきたからね。人口も少ないし。しかし金融崩壊で、だんだんそうも云っていられない事態になってきたとか。
よくカナダ人と税金や社会保険の件で話すと、高すぎるとピーピー云う。それは隣の米国と比較がすぐ出来るからだろう。国際的にはそれほど高くないじゃないか。
しかし、これは負担率だから、これに対する各国の福祉・サービスがどのくらい反映するのかは分からない。例えばカナダの場合は、医療費の窓口負担は無料。また人口規模による違いもあるし、日本のようにやたら有料道路ばかりだが、反面、全国に新幹線鉄道網を整備している国もある。
よく、社民党の福島瑞穂ら程度が、スウェーデン・フィンランドのような国が羨ましい、そのような国を目指しますなんてやっているが。人口1千万人以下の小人口だから出来るという説も説得力がある。資源も多くそこで何かヒット品を世界に輸出できれば、それで十分やっていける。例えば、豊田市を中心としたエリア600万人ぐらいが独立国家となったとしよう。そこには地下資源も豊富、林業も豊富でなを且つ自動車会社(トヨタ)が、近隣国や世界に輸出で大儲けが出来れば、こりゃ最適な福祉国家も不可能ではない。
さて、消費税についてだが。ホラ瑞穂!あんた達がマンセーな北欧ってこんなだよ!いいとこ取りばかりするなよ。
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今、参院選でまたまた消費税増税か、否かが焦点となっている。
オイラ消費税を上げることは、反対ではない。このグラフを見れば、トレンドとして上げざるを得ないだろう。
このグラフに表れないものとして、州の消費税があり、各国様々にある。
カナダは連邦政府は7%だったが、6%になったらしい。しかしここにはないが、これに上乗せで州税加算される。バンクーバーなどのBC州では、+7.5%となり、合計13.5%となる。
米国も、連邦税は0%だが、州税がある。カリフルニア州では8.25%で地方消費税ってのが加わり、現在10.75%になっている。
消費者から見れば、実は物価高も消費税増税も財布から出るお金には違いがないから、このようにデフレ傾向にある場合には、たいして違いがない。500円(総額)の弁当がデフレ競争で、400円(総額)になり、消費税が15%になって437円(総額)になりましたという図式になる。
平成16年から、総額表示に変わったので、内税のような価格表示になり、実際の購買では何が何だかわからなくなる。まぁ、心配なのはこれを機にして、価格低下競争をリセットして、本体の値上げをしないかということ。デフレ克服には役立つかもしれないが。
あとは、設備投資費だ。前回では、建築について施行日以前の日付の契約書があれば、以前の消費税額で通った。だから駆け込み需要だ大変多かった。今度はどうするのか。なんたって、たった5%増税でも1億円で500万円余計に掛かることになる。10億なら5千万円だ。需要の落ち込みは数年続くだろう。数年づつ数%UPを繰り返すなんて方法もあるが、そうとうに混乱することだろう。
前回も問題になったが、最低限の食料品の減税だが、範囲を区切るのが難しいなんてことで見送られた。だが消費税の高いところは実際やっているのだから、真似をすればいい。
(30日追加)公平ではないので、今度は各国の消費税額の割合も載せておきます。
日本は消費税5%統一ですが、各国は減税率(食品等)も含まれていますから、上記の*%が租税構成比に反映されるわけではありません。上から2ブロック目が消費税の租税負担率。隣の(*****)が、租税の構成比となります。消費税の占める割合を見ると、日本は、28.3%。米国が21.6%、英国が36.2%、ドイツが46.8%、フランスが39.5%、スウェーデンが36.5%となります。
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租税負担率の内訳の国際比較
(注)1.日本は平成19年度(2007年度)実績、諸外国は、OECD "Revenue Statistics 1965-2008"及び同 "National Accounts 1996-2007"等による。なお、日本の平成22年度(2010年度)予算ベースでは、租税負担率:21.5%、個人所得課税:7.2%、法人所得課税:3.4%、消費課税:7.1%、資産課税等:3.9%となっている。
2.租税負担率は国税及び地方税の合計の数値である。また所得課税には資産性所得に対する課税を含む。3.四捨五入の関係上、各項目の計数の和が合計値と一致しないことがある。
ついでに、法人税の構成比は、上記より
日本が26.4%、米国が14.3%、英国が11.5%、ドイツが9.6%、フランスが10.8%、スウェーデンが10.6%となっており、日本の法人税は構成比が高いことになる。
これから、老人人口の増加で、年金・医療等で年々財政がひっ迫するなかで、安定した税収を得るのには、この消費税というのがいいというのが、世界各国の行き着いた結論なのだろう。
しかし、GDPの落ち込みはあったにせよ、なぜ税収が10兆円も減ってしまったのか。下のグラフはGDP(国内総生産)の推移だが。
(注:各棒グラフにカーソルを当てれば、そのGDP額が表れます。また下数字(2)をクリックすると寄与度の表に変わるという優れものです)
ところが、GDPのもっと低い時代に、以下のように豊富な税収があった年代もあった。
これを見ると、平成2~7年位まで税収は多かった。結局以後の所得税、法人税の減税改正に原因があるのかもしれない。特に、法人税は様々な控除が設けられ、法定実行税率40.86%は建前で実質的には30%以下なんて大企業が多くあるらしい。またこの法人税にしても大変複雑になっている。だから、日本は法人税が高すぎるという御用学者の云うことは、半分ぐらいしか信じられない。その時の攻めぎあいで決まっているものが多すぎる。
あの当時、これからは直接税から、間接税(消費税)の比重を多くしていくべきだという傾向で、財務省は直接税の減税を先走りすぎてきたのではないだろうか。
ともかく、ここまできてしまったら、「政策の貯金」であったこの消費税の増税を取り崩して実現すべき時なのだろう。
どさくさにまぎれて、高待遇となっている公務員給与20%カット、公益法人の役員・職員の減給。民主党詐欺マニフェストのバラマキ政策の一部廃止。等などを条件に前向きに消費税増税の論議をしていただきたい。
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コメント
ちょと長いですが・・・・。
スウェーデンは高福祉だが高負担だ、といいたいのでしょうか。確かに、スウェーデンの国民負担は70%くらいと見えるますが、実際には政府は「あずかる」だけで、政府は素通りして、そのまま右から左へ50%を国民に配るのです。それがばらまきかどうかは別として、金額としては国民から集めてそのまま国民に配るので国民は負担していません。
100万円もらったお給料のうち70万円天引きされたましたが、同時に50万円振り込まれました、その場合国民負担70.7%といえるのでしょうか。(但し、高所得者は多くとられて低所得者は大きく戻ってくるので、これは国民全体を一まとめとした場合と考えてください)。
スウェーデンの本当の国民負担率は、20%程度です。日本は40%ほど集めて15%ほど配るので、本当の国民負担率は25%ほどです。これはスウェーデンより国民負担は重いといわざるをえません。
ですから、スウェーデンの国民負担率が高いなどというのは錯誤にすぎません。
実際日本の財務省だけが、こういう世界に類を見ない「国民負担率」なる数字を発表し続けています。もちろん官僚の出す数字というのは数字そのものは虚偽ということはありません。
しかし、毎年「国民負担率」なる数字を発表し、スェーデンの数字を付記することを忘れない。こんな錯誤を誘発するようなことがいつまで通用するはすがありません。
投稿: 陳湖臭 | 2010年6月30日 (水) 10時13分
陳湖臭さん
そういえばそうですね。
大雑把にいえば
高負担の国は、自分の金⇒国でガラガラポン⇒自分の消費
低負担の国は、自分の金⇒自分の消費
だから、スウェーデン等でも大企業は出て行ってしまいつつあり(または買収され)、また優秀な人間は、海外に移住している現実があります。優秀でない人たちが増えていきます。
高負担国の一番の問題は、今EUがそうであるように、国が赤字を背負い込んだ場合、結局国民は取られ損になり、ギリシャのように、そのツケが回ってくることです。
国民負担率は、各国の統計でも出しているようですが。
投稿: オイラ | 2010年6月30日 (水) 13時38分
数字に関する質問ですが・・・
日本の社会保障費(年金や医療)は企業が半分負担していますが、これは国民に負担を安く見せるためだけ企業からみれば給与の一部=国民負担だと思いますが、この数字は考慮されているのですか?
投稿: きりん | 2012年9月20日 (木) 13時08分
専門分野でないので良く分かりません。
こういう疑問が起こるのも、旧社会保険庁の
ごまかし体質からでしょう。
ただ付言として、年金は労使折半が世界的には常識になっているようですが、
例えば、年金のお知らせ通知が来ます。そこには過去納めた個人の年金の累計の残高が記入されています。結果として、その額に比例して、給付が行われることになりますが。
ところが、そこには企業側が負担した分は入っていません。そこで電話で問い合わせました。その分はどうなっているのかと。
すると、本人の累計残高とはならず、社会保険庁の経費や、障害者年金への給付などに使われますと。多分一時グリンピアなどの建設などにも、余裕があると見て、景気良く使われたのでしょう。いわば背任のようなものだと思う。
ここから考えると、ご質問の件で、企業側の支払い分は参入されていないと思います。
そして、なぜかメディアでも、この企業側が支払う分の行方を追った論説がないのですよね。
きりんさんも電話で年金機構に問い合わせをしてみてください。そして、ご報告をお願い致します。
投稿: オイラ | 2012年9月20日 (木) 14時04分
社会保険庁の経費は年金保険料からは一切払われることは
ありません。すべて税金で賄われていました。
また会社負担の掛け金がすべて本人に回らないという
のも間違いです。会社負担分+本人負担分ト-タルで計算
して個人の年金と傷害保険、その他保険の支払にあて
ます。掛け金の合計は、年金を計算するうえでの単なる
係数です。会社の分と合わせてもよいのですが、その場合
は係数にかける金額が半分になるだけの話です。
投稿: 119 | 2014年8月 6日 (水) 03時05分