米国の医療費VS日本の医療費。日本人でよかったのかもしれない。
オイラ、将来米国に住む予定もないのでどちらでもいいのだが。それにしても、米国の医療費の値段の高さには驚いてしまうね。なぜあんなに高いんだ?
時々、「***ちゃんが、米国で心臓移植をする費用の募金を!」なんてのがあるが、全てで1億だの2億円だの掛かるという。渡航費・事前検査費・両親含めた滞在費などが含まれているだろうが、全体から見れば大した金ではない。実際の手術費・入院費・治療費は一体いくらの見積もりなんだろう。
オイラ、建築設計業なのだが、一般には面倒くさいので、総工事費の*%というのが多かった。しかし実際には、大きく分けても基本設計+実施設計+工事監理関係+行政手続き+総合コンサルタント+その他等。それらに一体どのくらいの業務量がかかったのかが本当の目安となる。だから建築士法第25条に大臣勧告というのがあって、総工事費に基づいて、各項目の標準業務人×日数×業務能力単価×2+αというふうになっている(これだけ取れればラッキーなのだ)。弁護士の世界では多分これの2倍から3倍は吹っかけると思う。
本来医療の世界でもこの原則は変わらないわけで、医師・看護師の人件費+機材償却費+施設費+総合業務費+αが医療費となるはずだ。医療関係者の人件費が日本より高いのはともかくとしても、標準で2倍と考えても、なんでこんなに米国の医療費は高いのだ。驚いてしまう。
以下は参考例の報告なのだが、間違っていたら指摘して下さい。
「アメリカの医療費」について(大変よくまとめられています)
「米国の医療費は非常に高額です。その中でも、マンハッタン区の医療費は同区外の2倍から3倍ともいわれており、一般の初診料は150ドルから300ドル、専門医を受診すると200ドルから500ドル、入院した場合は室料だけで1日約2千ドルから3千ドル程度の請求を受けます。例えば、急性虫垂炎で入院、手術(1日入院)を受けた場合は、1万ドル以上が請求されています。 歯科治療では、歯一本の治療につき約千ドルと言われています。これには下記に説明する二重構造の問題があります。 米国人が加入している管理型医療保険制度の下では、医療機関と保険会社との間で契約が交わされており、疾患毎に定められた規定治療費用(定額)が保険会社より医療機関側に支払われます。」
過去のデーターなので1US$=105円で換算し、万円単位四捨五入。
○子宮筋腫の治療費 日帰り外来手術 100万円以上
○虫歯の治療 2本で1200ドル 13万円
○出産費用 14,000ドル 150万円
[出産費用請求内訳] 産婦人科医: 7,000ドル 麻酔科医 : 2,000ドル 小児科医 : 2,000ドル 入院費 : 3,000ドル 計 : 14,000ドル
○嘔吐と下痢 ロタウイルス感染の子供さん2人の5日間入院費 140万円
<盲腸手術入院の都市別総費用ランキング> 2000年AIU調べ
順位 都市名 平均費用 平均入院日数
1 ニューヨーク 243万円 1日
2 ロサンゼルス 194万円 1日
3 サンフランシスコ 193万円 1日
4 ボストン 169万円 1日
5 香港 152万円 4日
6 ロンドン 114万円 5日
11 グアム 55万円 4日
因みに日本での虫垂切除術の手術代の保険点数は6420点(64,200円)となっています。看護基準・平均在院日数で最高基準の病院の1日の入院費は1200点(12,000円)程度ですから4-5日の入院なら、幾ら検査や投薬があっても普通30万円を超えることはないと思います。
アメリカ各地の入院・部屋代1日分(部屋代だけです)
ニューヨーク 個室:約150,000円 ~ セミ個室:約100,000円 ~ 一般病棟:約 70,000円 ~
ロサンゼルス 個室:約100,000円 ~ セミ個室:約 80,000円 ~
ボストン 個室:約 50,000円 セミ個室:約 40,000円 一般病棟:約 30,000円
医療に関しては、日本に生まれてよかったね。民間保険問題はともかく、そもそもモトが高いから、保険の種類によってはカバーしてくれない場合、中流家庭でも大きな病気では治療費が莫大な金額になり、最悪、家は押さえられ競売され、自己破産なんてことが多いと聞く。救急車だって原則有料らしい。
まして、民間保険が高くて加入していない米国国民は約4,700万人いるとか。中規模国の人口クラスの人数だ。これに莫大な数の密入国者も加わる。永住権だけの移民もいるがこれはその中に入っているのかは解らない。
だからか、一般に米国のドラックストアーで売られている薬は日本と比べはるかに安い。また、なるべく医者にかからずに自然治癒療法で治してしまう人が多い。ちょっとでも具合が悪いとすぐ医者に行く日本人はよくバカにされるが、本当に恵まれている。
もちろん、日本では国民皆保険、いわば税金のようなものだ。そして、医療費についても政府により上限キャップを嵌められているので、米国のように無限にボッタクルわけにはいかない。日本の盲腸の手術代30万円と米国の200万円とどう違うのか。たいして変わらないと思うよ。
オイラの娘が子供のころ、虫垂炎を患って入院したのだが、約1週間の入院で自己負担(3割負担)は数万円で済んだ。オイラ1回だけ入院の経験があるが、それは内視鏡で大腸の良性(結果判明)ポリープをとったのだが、4泊の入院で自己負担は約6万円。それも年間合計7万5千円収めている民間保険で回収した。しかしこの保険15年ぐらい入っているので、累計112万5千円納めて6万円の配当ってこと。こう考えるとまったくバカらしい。まあ死亡時や傷害もカバーしているが。
日本の場合、会社の健康保険料は、最高収入は月額百十二万円で打ち止め。これ以上の収入があっても、最高額は、40歳~65歳未満とすると会社と社員折半で月額計113,619円。年間では、会社681,714円+社員681,714円となる。
下限は、月額収入が63,000円(これ以下も同様)最低額は40歳~65歳未満とすると会社と社員折半で月額計5,446円。年間では、会社32,676円+社員32,676円となる。全体として全て収入に対して合計で9.39%で、折半でその半分4.695%づつとなっている。
その上で自己負担は医療費の3割となる。
国民健康保険は、会社員としての収入がない、自営業や失業中らが対象になるわけだが、大変複雑な計算となっている。
こちらは年額を基本にしている。大きく違うのは固定資産税も対象になっていることだ。評価の高い不動産を持っていると、それが大きく反映する。今は全体に下がっているが、これが高率で上がると大変なことになる。3種合計で固定資産税の31.2%が加わるからね。
しかし最高限度が決められていて、医療分47万円+後期高齢者支援金分12万円+介護分8万円=67万円/年が最高額となる。
オイラの知人が事業に失敗して、大借金(金融機関だけでなく多くの知人にも)に追われ、当然国民健康保険料が払えない。どんどん未払い分は積みあがる。悪いことに持病の糖尿病が悪化して、足が壊疽になり始めた。それでも満足に病院に行けない。僅か数年で病死した。これは、死後数年を経てオイラ知った。放漫経営で贅沢なことをしていた結果もあったのは確かだった。どんな世の中になっても、自分(家族)の身は自分で守るのが当然で、常に落とし穴に落ちないよう舵取りをしなくてはならない。
ところで、話を米国の医療に戻すと、なぜ米国の医療費はこんなにボッタクルのかだが。
大きな原因として、米国は訴訟社会だということがあげられるそうだ。だから問題を起こさない医療をするために、過剰な医療体制で臨む。
具体的には、
まず、日本の薬剤の平均価格はイギリス、フランスの約2.6倍、ドイツの1.4倍、アメリカの1.2倍と言われており、ペースメーカなどの一部の医療器具や医療材料には、欧米の数倍もの値段が付いていたりします。それなのに何故、逆にアメリカでは日本と比べてこんなにも医療費が高いのでしょう。
我々もアメリカの医療費の細目を詳しく理解しているわけではありませんが、一番大きな違いは、診察費・人件費に関する費用だと思います。医薬品・医療機器の代金は変わらなくても、医師に支払われるドクターフィー、入院時の部屋代・看護代などのホスピタルフィーがべらぼうに高いのです。
その理由は例えば日本では一般病院のベッド100床に対して医師数は13人、看護師は44人以上が施設基準ですが、アメリカでは医師は72人、看護師は221人にもなり、アメリカでは日本の5.5倍の医師と、5倍の看護師がいると言うわけです(1998年OECD統計)。
また同じような規模での病院の職員数を比較した資料では、ボストンのSE病院ではベッド数350床に職員2011人、病床数310床の日本の国立病院では総職員数200人で、アメリカの方が約10倍であるとのことです。このような職員数格差を考えれば、アメリカの医療費が高くなるのは当然だという気もしますし、もっとゆとりのある手厚い医療や看護も可能だろうと思われます。
このようなコストを問題にしないのなら、アメリカの基準の方が優っているのは当然で、多くのマスコミがこのコスト格差に触れることなく「アメリカの医療・看護はずっと手厚い」と安易に報道することは、国民の皆さんをミス・リードし兼ねぬものと危惧します。
因みに日本の大学病院には、研修医や無給医局員という若い医師たちが多数存在し、職員数不足を補っていますが、薄給或いは無給ですから、医療費は高騰しないのです。そのほかにアメリカで大きく日本と違うのは、医療費自体が統一価格でないこと、州によって医療費が大きく違うこともあるようです。
1.医療損害保険料
李氏によれば「アメリカでは、1970年代の初め、医療訴訟の急増と賠償金額の高騰により、保険会社は医療損害保険から撤退したり、大幅な掛金の増額を行った。そのためアメリカでは医師の収入の3割が医療損害保険料に当てられ、過誤保険の保険料の高騰は,特に,産科・救急外科など,過誤訴訟のリスクが高い科の診療にたずさわる医師を直撃し、それまで,年4万ドルだった保険料が,年20万ドルを超すことになった例も稀ではなく,過誤保険の保険料を払うためだけに診療をするなど馬鹿げていると,医師を廃業したり,産科医が妊娠中の患者を置き去りにして過誤保険料が高いネバダ州から安いカリフォルニア州に転出したり,家庭医が保険料を安くするために産科診療をやめたりする事例が続出した」とされています。医療損害保険料の高騰は医療費全体にも大きな影響を与えています。
2.医療過誤危機(Malpractice Crisis)
Malpractice Crisisとは「医師や病院が,保険会社の撤退のせいで医療過誤保険にアクセスできなくなったり,保険料の高騰で過誤保険が購入できなくなったりすること」を言います。しかしそれだけでなく、「保険料の高騰は全米的な現象であり、医療過誤でいつ訴えられるかわからないという恐怖心のもとで医師が診療を行なわざるを得ないことの最大の問題は,誰の目にもそれとわかる社会現象として表に現われる Malpractice Crisisにあるのではない。より深刻な問題は、医療過誤訴訟の恐怖が,医師たちにDefensiveMedicine(防衛医療,保身医療)」の実施を強制し,それと見えない形で医療そのものを歪めていることにある」と述べています。
3.防衛医療(Defensive Medicine)」
防衛医療・保身医療は医療過誤訴訟だけの問題ではなく、医療過誤訴訟の恐怖による「無駄な」医療が、アメリカの医療費を大きく引き上げていることも見逃せない事実です。例えば頭痛の患者さんを診察する際、医師は頭痛の部位や起こり方、経過などから鑑別診断を進め、その結果、鎮痛剤の処方や「様子を見ましょう」だけの場合が多いものです。しかし、稀には脳腫瘍や脳内出血などが潜む場合もあり、過度な訴訟社会ともなれば、医師は保身のために全ての頭痛の患者さんに頭部のCT・MRI検査を指示するようになります。こういう医療がDefensiveMedicineであり、訴訟社会が生んだ無駄な医療費と言うことも出来ます。
李氏は「Defensive Medicineがどれだけ医療費を押し上げているかについてもいくつかの研究があるが,医療過誤の賠償金に上限を設けるなどの法的対策を講じていない州では,そのような法的対策を講じている州と比較して,医療費総額の5-10%が余計にDefensive Medicineに消費されているのではないかと推計されている。しかし,Malpracrtice Crisisに対する法的対策を講じている州でDefensive Medicineがゼロになるということはありえず,Defensive Medicineによる医療費の”無駄使い”は想像もできないほど巨額なものであると考えてよいであろう」と述べています。
このようにアメリカの医療制度を検討するならば、様々な疾患の医療費の細目を比べてみることも必要ですし、医療以外のことにも目を向けねばなりません。アメリカ並みの医療を求めるのなら、それを支えるに足る人件費を含む医療費を設定しなければならないと思いますし、現在の保険診療の決められた点数の中で、日本の医師や医療機関の医療損害保険料は、どこでどのように負担するのかも考えねばならないと思います。
しかし、医療費削減の大合唱の現状で、アメリカのような医療供給体制を取れる筈がありません。しかるにコストを論ぜず制度だけ取り入れようとする経済学者の主張には、充分に注意を払う必要があります。
このような結果として、マイケル・ムアー監督の「シッコ(Sicko)」なんかのドキュメンタリー映画の米国医療の世界があるのだが(この映画、多少オーバー表現もあり)。
今オバマは、念願の国民皆保険制度創設に奮闘している。
現在でも公的保険は65歳以上の高齢者ら向けの「メディケア」、低所得層が対象の「メディケイド」や軍人向けのものなどに限られていて、国民の約3分の2が民間の医療保険に加入する一方、15%にあたる約4700万人が無保険者となっている。
民間保険加入者の約9割は勤務先を経由して加入しているため、失業した場合には無保険者となってしまうなどの弊害が出ている。公定診療費も設定されておらず、経済協力開発機構(OECD)の統計によると、1人当たり年間医療費は2007年に7290ドル(日本は06年に2581ドル)と高額。国民医療費の国内総生産(GDP)比も16%(同8.1%)と高く、財政を圧迫している。(ワシントン共同)
しかし、オイラには理解できないのが、現状では多くの米国民がこの創設に反対で現状の民間保険制度のままでいいと云っているのだ。一説には、医療業界・民間保険業界からの圧力や、米国民の「個人の選択の自由=個人主義」尊重の精神だとか、まぁ、イロイロあるらしい。世論調査では半数以上が反対を示しているとか。
オバマは医療保険制度改革法案の承認デッドラインを10月としているが、それを実現するためには、上院議員は来月中旬までに法制化の作業を始めなければならない。またその中身もどんどん後退しているらしい。
さあどうなるか。ここに来てオバマは、異例の演説をした。
米大統領、医療保険改革の断行表明=「争いやめ行動を」-異例の議会演説:9月10日
【ワシントン時事】オバマ米大統領は9日夜(日本時間10日午前)、米上下両院合同会議で演説し、「国民皆保険」の実現を目指す医療保険制度改革への支持を訴えた。大統領は医療保険のコスト上昇による財政赤字の膨張や家計の負担増大に懸念を示した上で、議場を埋めた与野党議員に対し「何もしなければどのような事態が起こるか、ここにいる全員が認識すべきだ」と警告。
「今こそ言い争いをやめ、行動する時だ」と改革の断行を表明した。 年頭の一般教書演説以外で大統領が両院合同会議で演説するのは異例。テレビ視聴率の高い夜の時間帯を利用し、国民環視の下で議会に改革実現を迫ることで、年内の法案成立に向けた主導権を握るのが狙いとみられる。
現状の体制についてだが、この民間医療保険というのもイロイロ種類があって、理想的なカバーは期待できないことが多いらしい(もちろん最高額の保険に入っている場合は別だが)。一般の場合、保険会社や保険の種類によっては、病院指定なんてのもあるそうだ。また、この治療ならOK、この病気治療はNOとかも。日本では考えられない。
民間標準保険料も年収600万円(可処分所得470万円)の標準世帯で年間50数万円掛かるそうだ。それも日本のように収入の*%ではなく、定額に近い設定とか。だから低所得者は入れない。またそれプラス、利用回数が多くなると、ペナルティー的にさらに保険料が高くなるとか。それとは別にヘルスケアー(治療費含む)に年間25万円といった平均経費だ。
今回のオバマの国民皆保険創設については、また時期も悪い。バブル崩壊で米国はメタメタに国家財政・経済が落ちている。なんでもこれが実施されたら、とりあえず10年間で80兆円もの税金を投入しなければならないとか。現在米国の失業率は10%以上だ。インフルエンザに罹っても、日本のように病院に行けない人が少なくとも数千万人もいる。また来てもらっても病院側は困る。
オバマは米国の長年のこの政治課題を達成できるか、または、メタメタにされて実現できず支持率が大幅に下がる原因をつくるかだ。現在でもオバマの支持率はどんどん下がってきている。
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コメント
-オバマ大統領に捧げるメッセージー
核戦争なき世界の理想実現に向けての第一歩
より信頼される医療、&より良きリーダーの指導力を求めて
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追伸 〇 基金 ー 最 大 ー の功労者は
~ 〇〇さま???(△35) ~
投稿: 小泉純一郎前首相の医師久松篤子 | 2010年4月26日 (月) 16時07分