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2009年7月31日 (金)

住宅建築は気をつけて!特に設計施工一括発注は!

ここのところ、専門分野の記事が少ないとお小言を頂いた。これはオイラがあまりにも専門外のことに興味を持ちすぎていること以外に、なかなか建築関連というのは、常に全ての方々に興味のある分野ではない。

もし今住宅を手に入れようとか、建築主になるとか、建築のクレームが発生したとか、リフォームをしたいとか等の人たち以外はあまり興味が分野なんです。難しい用語も出てくるし、意外に範囲は広いし。

しかし最近も住宅メーカーの倒産があったりで、それによる金銭的被害者も多く発生したりして。特に富士ハウスやアーバンエステートの倒産では、被害者はその二つだけで、数千件に登ると云われている。

これまでのこの関連のオイラの記事として、

拝啓、アーバンエステート様。結局いつも儲けているのはCM会社だね。2009年3月25日 (水)

があるのだが。

まず住宅を手に入れるのには、

1. 分譲マンション・分譲住宅とする。

2. 住宅メーカーの注文住宅として建築主となる。(設計・監理は同じ会社系)

3. 設計事務所に依頼して設計監理を依頼、建築業者(会社)に建築をさせ建築主となる。

4. 設計事務所に依頼して設計監理を依頼、施主直営工事として各専門業者に施工をさせ建築主となる。

5. その他

1.については、今回の取り上げたい問題と違うので省略。

2.について

先進国のなかで、設計・監理業と建築業(施工業)を併用していいなんてのは、日本以外はない(設計施工一括業)。欧州も北米もはっきり分かれている。

建築設計事務所は、建築主の建築に対する希望をかなえる為設計し設計図書を作り、それを、どの建築会社に施工させるかを建築主と決定し、監理の工程で施工が適切に行われているか等を検査・指導をし、適切な完成をさせることを旨とする。また完成後、もし瑕疵が発生した場合、専門家として適切な助言や資料を提供する。

だからこそ日本にも建築士法という法律があり、その法的業務が規定されている。いわば素人である建築主(施主)を守る為にもある。それが住宅メーカーの場合、又は設計施工会社の場合、本来の設計事務所の仕事と建築施工とを兼ねることになる。こんな怖い話はないわけで、いざとなれば建築施工会社が何とでもできる体制で、建築主は発注することになる。

もちろん小さい工事(500万円以下ぐらい)なら目が届く範囲なので、そこまでのことはないであろうが、1000万円以上、3000万4000万円またそれ以上をこの設計施工で任せたら、誰が公平に専門家として、また建築主の代弁者となって建築工事を進ませるのか。

建築途中に施工会社が倒産したなんてことは、これ以前もよくある話で、求めに応じた為に、先に代金を払ってしまい、しかし建築は途中。過多の代金を払わされた事例は沢山ある。本来工事契約は、民法でいう請負契約となる(委任契約というのもあるが)。請負契約の場合、請負った物件が完成し、問題がない時点で初めて全額が払われるのが基本だ。(請負契約は江戸時代からある古い契約の仕方だ)

しかし例えば3000万円の金額を、業者が完成まで一銭も貰えないで建築することは、金利や資金の都合を考慮すれば現実的ではない。また建築には数ヶ月以上掛かるからね。そこで請負契約上いわば特記事項的に、契約着手金30%。上棟時(屋根まで完成した時)30%又は40%。竣工時(完成時)40%又は30%が一般の契約条件となり支払い条件となる。

オイラが監理する場合には、竣工時(完成時)30%にしてその1ヶ月後、残り10%の支払いとさせる。(瑕疵が発生したらその改修をすばやくやらせる為)20億30億円の規模の場合には、出来高払いにして(大抵資金力のある会社となるので)、決められた工程をパスしたらその都度代金の支払いを建築主にさせる契約方法を採用する。

今回、業者の倒産で、完成建物は得られず、ローンだけが残ったという悲劇は、まず住宅メーカー等との契約は実質設計施工で展開して(カモフラージュとして業者側設計監理事務所の場合もあり)起こっているのが大半だ。特に悪質だったのは、資金繰りが厳しくなって、契約にはない先払いを、旨い口実を作って無理やり過多代金の支払いをさせたことだろう。苦しくなれば、美しいうたい文句なんてどうでもいいのが定説だからね。

かわいそうなのは、専門家で囲まれた中に「素人の建築主」というわけだ。この流れに逆らう手腕なぞ皆無だからね。またあれだけ宣伝・テレビCMを派手に流しているところが潰れるわけがない。大丈夫だ、ということになる。パンフレットやHPぐらいでは経費もたいしたことはないが、テレビCMの経費なんて数千万も掛かる。それが毎回流されている。

そもそも建築業はクレーム産業なんだから、テレビCMバンバンなんてやったら、過大宣伝費になり、やがて行き詰まるのは当たり前なんだよ。まあ、しかしこれが事件になった場合、テレビ側はCMでしっかりお世話になっているから、建築主の被害、住宅メーカーへの糾弾は深追いしないのがお約束。まったくしっかりしていて呆れちゃう。

アーバンエステートのCMなんて60年保証だって。笑っちゃうよ。60年間派手にやっている会社がもつ訳がない。一見安そうな建築費に引かれたお客も多かったようだが、あんなうたい文句アテになる訳がない。お客は完成全てがその金額だと錯覚して申し込みをするが、オプションばかり提示され、結局その金額で収まる訳がない。完成物を買うわけじゃないんだよ。建築の場合は。全てが業者側の意図した方向で進み、気がついた時点ではもうとても戻るすべがない。

完成保証制度なんてのも出来たようだが、ありゃ任意だ。旧建設省や今の国交省も中途半端な改正ばかりして、より建築業務を複雑化させ、手間ばかりかかるようにし、また役人の受け皿ばかり作って、天下り先をケンチクするのに余念がない。これらのとばっちりは最終的には建築主。建築主の支払う代金がより高くなる仕組みになってしまう。

オイラが考える改善策は、

1. 建築をする際の建築申請だが、行政が法的に責任を待たなくていい現在の「建築確認申請」ではなく、行政も法的責任を取らざるを得ない「建築許可申請」とすることだ。これは、欧米では常識だ。

2. 建築に際して、設計業と施工業の併用(設計施工一括)を認めない。利害関係が対立することから建築主を守るため。これも欧米では常識(北米の場合法的規制ではなくギルド制からの民間協会の規制)    これが出来ないのは、建設会社や住宅メーカーはしっかり政治献金をしてきたからね。建設会社側が不利になるようにはさせないのだよ。官僚もズボズボの関係で来たからね。

3. 最低限の瑕疵保証は今も法的にあるが、それ以上の出来もしない保証のうたい文句は禁止させる。北米の場合、インスペクター制度がしっかりしていて、建築工程の検査体制を、インスペクターがその都度責任をもって検査とOKを監視する。各工程でミスや瑕疵があれば、それを改修してOKを取らなければ、次の工程に工事を進めることができない。だから逆に建築業者の保証というのは一般的にない(建材の品質保証はある)。完成後インスペクターが、最終の検査でOKを出せばそれで完了。そのようにしたほうがいいだろう。これでも、北米でも法的指導で瑕疵が発生することがある。裁判で行政が訴えられることしばしばあり。

4. 違法建築に対して行政は断固とした対応をすばやく行う(代執行)。また損害(火災等)保険会社やローン会社とも連携したスキームのシステム作りをする。これも北米では常識。(これ重要です)

まあ戦後貧しい中から立ち上がった日本の建築行政は、先進国と比べてまったく規制緩和で来た国であることを頭に入れておいてほしい。だから先進国の中で一番醜い街並みになってしまったことは、皆さん旅行で海外の住宅街を見れば、比べればお分かりになると思う。

最後に今回の金銭的災難に拘われた方々には、全額または大半の代金を取り戻す方法はオイラ、明示することはできません。裁判・弁護士等の世界となります。以下はこれから建築する人の参考にしてください。

これは知っておけ!ハウスメーカー倒産被害の原因

特集その1

特集その2

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コメント

このテレビ番組で、最後のほうに施工の進行状態をチェックして、出来高で支払う方法を紹介していた。
これがいわゆる出来高支払い方式契約だね。

設計事務所が監理の仕事の範囲でやればいいと思うが、
建築士法にはそれに触れた法令はなく、やるとすれば別契約としなければならない程の手間が掛かる。

多分これについては、資格は必要ないから素人が検査する場合も発生する。

あと2000万円規模の建築契約で施工会社側でこの出来高支払い契約を受け入れるかが未定。

いまのままでは、トラブルを起こしやすいと考える。

投稿: 設計士 | 2009年8月 1日 (土) 12時59分

参考になりました。
ところで我が家は太陽ソーラーシステムを検討していますが、どうでしょう?
ブログ主さんのお考えでは「やめとけ」になると思うのですが、私のソーラー発電導入検討の理由は電気代や、
エコ(←この言葉は嫌い)ではなくて、来るべき、南海地震に備えてなのです。オール電化も検討中で、その場合、大震災がきた時のライフライン確保になるのでは、、、との思いからです。
まあ、倒壊したり火災が起きたら関係ないですけどね。
現時点での建設予定地はなんと海抜0m地帯。津波は6m~が来ると予測されていますので、土地から変更した方が良いとは思いますが、なかなか、、、。
個人的な相談ですみません。

投稿: らいおん | 2009年8月 2日 (日) 09時23分

らいおんさん

建築は幅が広いので参考になるか疑問ですが。
まず太陽ソーラーシステムについて。

例えば今年のように曇りや雨の多い年のとき、はたして経済的有効な電気を得ることが出来るかが信用できないこと。夜はまったく機能しませんね。(常晴天の地域ならOKです)

また経済的な補填をするために、政府は買入電力の価格を上げるために、その皺寄せとして売り電力の価格を上げる案も浮上しています。⇒とんでもない。

また、設置費用からペイするのに20年とか言われていますが、そのころ、この太陽発電の寿命はどうなっているのか。

屋根に取り付けることになりますので、台風等で破損したり、屋根や屋根に繋がっている躯体を痛めることは絶対ないか。

生産側を保護する目的がミエミエな政策で、CO2削減はお題目になってしまう。(人工CO2はなんの影響もないと考えてます)

そもそもCO2温暖化説はインチキだと思っている。人工排出CO2は、気候になんの影響も与えないと考えています。

まあ、一時しのぎの実験台に使われる結果になるような気がします。比較になるかどうか、私の家では大昔、太陽熱温水器を付けて(私の父が)太陽からのエネルギー補給のその「光と影」を経験しています。

地震時の長期停電用電源確保が目的なら、家庭用自家発電機を数台用意しておいたらいいでしょう。私はそうしています。もちろんガソリンエンジンです。1台800Wで3万円前後です。もちガソリンも車と兼用で。ガソリンタンクに常駐。配線は配電盤でつないでやれば、最低限の電化生活が遅れます。

津波に関しては、過去の津波では、住宅の躯体まで流されるほどのものはありません。いわゆる大河川が氾濫したような状態で、また瞬時の出来事になりますので、家ごと流されるということは、めったにありません。

どうしても心配なら、例えば1階は鉄筋コンクリート(RC)造の車庫を兼ねた倉庫、2階3階が木造で居室とする。私の家は、まさに目の前が海なのでそうした設計にしました。

氾濫しそうな河川の近くの家もそのほうがベターです。それに要する増加費用は太陽ソーラーシステムの費用と同額前後でしょう。


投稿: オイラ | 2009年8月 2日 (日) 17時04分

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